回復を支える「脳の栄養」―メチレーション(MTHFR)とビタミンB群を、やさしくひもとく

前回の記事でお伝えした「心の支配」から抜け出すためには、まず「身体の土台」を整えることが近道です。
神経が飢えている状態では、冷静な判断が難しくなるからです。

依存症は、心の問題や環境、習慣の問題として語られることが多いものです。
もちろん、それらはとても大切な視点です。

けれど近年、研究が進むにつれて、
依存は単なる「心の弱さ」や「意志の問題」ではなく、
脳や神経の反応のパターンとして起きている場合があることが少しずつ見えてきました。

刺激を受け取りやすい神経の状態にあると、
不安や緊張が抜けにくくなり、
それを一時的に和らげてくれるものに、強く引き寄せられてしまうことがあります。

そして、依存と「過敏さ」は、実はとてもよく似ています。
音や光、人の感情に敏感な人ほど、脳がフル稼働して疲れやすく、
その緊張を解くために依存という手段を選んでしまうことがあります。

こうした背景には、
生化学(身体の中の代謝)や遺伝的な体質、
特に、メチレーションやビタミンB群の状態が関わっている可能性があることもわかってきました。

このブログでは、回復を支える「補助輪」として、
身体と栄養の視点からやさしく整理していきます。

収穫野菜

メチレーションとは?

メチレーションとは、
脳や身体の中で起きている刺激や情報を受け取り、流していくための小さな仕組みです。

たとえるなら、
身体の中にある「配達・交通システム」のようなもの。
刺激や感情が入ってきても、
きちんと処理され、次へと流れていくために働いています。

この流れが滞ると、
緊張や不安が抜けにくくなり、
「何かに頼らないとつらい」状態が起こりやすくなります。

このメチレーションの流れを支えるために欠かせないのが、
ビタミンB群、そしてMTHFRという体質の違いです。

ビタミンB群とは?

ビタミンB群は、
脳や神経がスムーズに働くための基本的なサポーターのような存在です。

エネルギーを生み出したり、
神経の興奮を整えたり、
気持ちの切り替えを助けたり―

そのため、ビタミンB群が不足すると、
疲れやすさや不安感、
過敏さや落ち着かなさを感じやすくなることがあります。

「気合で何とかしようとしても、うまくいかない」
そんなとき、身体の側からのサポートが必要な場合も少なくありません。

そしてこのビタミンB群の使われ方には、人それぞれの体質の違いがあります。
そのひとつが、MTHFRと呼ばれるものです。

MTHFRとは?

MTHFRとは、
ビタミンB群(特に葉酸)を身体の中で使いやすい形に変える働きに関わる体質のひとつです。

この働きには個人差があり、
生まれ持った特性の違いのようなもので、
人によっては、同じように栄養をとっていてもうまく活かしにくいことがあります。

もしこの働きがゆっくりな場合でも、
栄養のとり方やサポートの工夫によって身体の負担を減らしていくことは可能です。

依存と「脳の報酬系の疲れ」

多くの依存性のある物質や行動は、脳内のドーパミンを一時的に大きく増やします。
その瞬間、救われたように感じることもあります。

けれど長期的には、

・喜びを感じにくくなる
・何をしても満たされない
・渇望が強くなる
・やめたいのに止まらない

といった状態に進みやすくなります。

ここで大切なのは、
脳は「気合い」だけでは回復しないということ。
回復には、材料(栄養)と、神経が休める環境が必要です。

依存は栄養を奪い、悪循環をつくる

アルコールや薬物、強いストレス状態は、回復に必要な栄養を消耗しやすくします。

とくに影響を受けやすいのが、
・ビタミンB6・B12・葉酸
・マグネシウム・亜鉛
・腸の吸収力
・肝臓の解毒力

これらが低下すると、脳はさらに不安定になり、
回復が難しくなる…という悪循環が起こります。

ホモシステインという見えない負担

ホモシステインは、
メチレーションがうまく回らないときに上がりやすい物質です。

高い状態が続くと、
神経系や血管に負担がかかりやすいとされています。

一方でホモシステインは、
適切な栄養(特にビタミンB群)によって下げられる可能性がある、
「変えられるリスク因子」としても注目されています。

「普通のビタミン」が合わない人がいる

体質によっては、一般的なサプリに含まれる葉酸やB12などをうまく処理できないことがあります。
まずは信頼できる専門家に相談したり、
ご自身の身体の反応を丁寧に見ながら、自分に合ったものを選んでいくことが大切です。

「飲んでいるのに不調が出る」
「不安が強まる」「頭痛がする」
といった場合、量ではなく形が影響している可能性もあります。

栄養は回復の補助輪

ビタミンや栄養は、依存を治す魔法ではありません。

けれど回復期の脳と神経にとって、
・気分が落ち着く
・睡眠が整う
・渇望がゆるむ
・身体の芯が戻る
といった変化の土台になることがあります。

栄養は「治療の代替」ではなく、
心理支援・医療・安全な環境とともに使う、回復を支える補助輪です。

回復の土台は、身体に

依存は、
「意志が弱いから」でも、
「心が未熟だから」でもありません。

不安や刺激を受け取りやすい脳と神経、
栄養が消耗されやすい身体の状態、
そしてそれを支えきれなかった環境。
それらが重なり合って起きていることがあります。

だからこそ回復は、
がんばって自分を変えることではなく、
身体と神経が「安心できる土台」を
少しずつ取り戻していくことからはじまります。

栄養は、そのためのやさしい支えです。
気づかないうちに消耗していた身体を静かに立て直してくれます。

自分を責める代わりに、
「どう支え直せるだろう?」と問い直すこと。
その視点が、回復への道をひらいていきます。

参考:セッションと日常でできること

ここからは、回復の土台づくりとして、
セッションや日常の中でできるサポート例をご紹介します。
回復のプロセスは、人それぞれ、段階もペースも異なります。

すべてを一度に取り入れる必要はありません。
「今の自分に合いそうなものだけ」拾っていただけたら十分です。

セッションでできるサポート例

※医療の代替ではなく、回復のための土台づくりです

私たちのセッションでは、
依存を「意志の弱さ」として扱いません。

神経系が限界だったこと、
身体が枯渇していたこと、
背景にある痛みを尊重しながら、
現実的に整えられるところから支えていきます。

1.血液検査の見方(回復の土台チェック)

医師の診断を前提にしつつ、回復の視点で一緒に見直せる項目例です。

・ホモシステイン(メチレーション負担の目安)
・B12・葉酸(不足や偏りの目安)
・フェリチン(鉄の貯蔵)(気力・脳のエネルギー)
・ビタミンD(免疫・気分)
・亜鉛・銅バランス(神経の安定)
・肝機能(AST/ALT/γGTP)(解毒の負担)
・血糖(空腹時血糖・HbA1c)(渇望と関係が深い)

※「診断」ではなく、回復の土台を整えるヒントとして扱います。

2.食事の整え方(回復期の基本)

回復期は「完璧な食事」より、神経が落ち着く食べ方が大切です。

・毎食、少量でもたんぱく質
・血糖の乱高下を避ける
・温かく、消化にやさしいもの
・急に制限しすぎない

3.休息の再学習(回復の中心)

依存の背景には、「休めない神経」があることが少なくありません。

・眠れない
・休むと罪悪感が出る
・静かになると不安が出る

そんな状態に対して、「休むことを安全にする」練習を行います。

4.神経系の鎮静(安心できる身体に戻る)

言葉だけでなく、身体の神経系に働きかけます。

・呼吸と身体感覚
・緊張と解放のリズム
・頭・胸・腹のつながり
・「今ここ」に戻る練習

回復は我慢ではなく、神経が安心を思い出すことからはじまります。

回復期のやさしいレシピ例

※MTHFRに限らず、神経が疲れている方におすすめです

・卵と青菜・豆腐の味噌汁
B群・ミネラル・たんぱく質
朝の不安、空腹のイライラに

・鮭+納豆+海苔ごはん(あれば、ねぎ・胡麻)
たんぱく質・B6・ミネラル・良質な脂質 
作れない日に最短で回復方向へ

・ひよこ豆カレー(ひよこ豆・玉ねぎ・人参・トマト缶・カレー粉・塩)
葉酸・B6・食物繊維
仕上げに豆乳を少し入れると神経が落ち着く味に

・レンズ豆のスープ(レンズ豆・玉ねぎ・人参・塩・あれば、クミン)
鉄・葉酸・たんぱく質
胃が弱い人ほど、スープが最強です

・ブロッコリーサラダ(ブロッコリー・ゆで卵・オリーブオイル・塩・レモン)
葉酸・ビタミンC
和えるだけ、ヴィーガンなら卵→ひよこ豆に変更

・きな粉バナナ豆乳(豆乳・バナナ・きな粉・あれば、ココア少し)
混ぜるだけ、衝動的な甘味欲求の置き換えに

回復期は、豆腐・豆・海藻中心の簡単レシピで、
スープ・丼・煮込みなど、温かく・やさしく・続けやすくが基本です。

食べ方のコツは、以下を参考にしてください。
・朝にたんぱく質
・温かい汁物を1日1回
・空腹を放置しない
・甘いものは「禁止」より「置き換え」

「ちゃんと食べなければ」ではなく、「身体が少し安心できるか」が目安です。
うまくできなくても、失敗になることはありません。